重なって透けるチュール。きらめくビジュー。
 繊細な刺繍《ししゅう》に、裾を長くトレーンする優雅なデザイン――。

 試着室に押し込められて、仮縫いされた純白のドレスを着つけられたルルは、大きな鏡にうつる自分をおっかなびっくり見ていた。

「いかがですか、ルルーティカ様」

 カーテン一枚へだててノアが話しかけてくる。

「いかがもなにもないわよ。これではのんびりできないわ。ごろごろしたら毛布にあちこち引っかけてしまいそうだもの」
「ごろごろするための服ではないですからね、それ。婚礼のための衣装です」
「はい!?」

 目隠し用のカーテンを開くと、待っていたノアが目を輝かせた。表情にとぼしい人だけれど、ルルの晴れ姿には心を動かされたようだ。

「ルルーティカ様、とてもお似合いです」
「似合ってるかどうかはいいの。花嫁衣装なんて仕立てる必要はないものを、どうして試着させられてるの?」
「いずれ必要になりますから。――このドレスに見合うアクセサリーと手袋と靴を」