「それで?なんであなたが、未だにここに入り浸ってるわけ?」

「……ライラが冷たすぎる……」

はあ……あれだけ堂々と、マリアーナに求婚してみせた王太子はどこにいった?晴天の昼間だというのに、店の奥の一席だけは、どんよりと空気が重い。

「ライラ!!今日も俺の番が可愛すぎる。おい、アルフレッド!!お前はライラを視界に入れるな。いろいろと減りそうだ」

なにが減るというのか……この一席は春爛漫。お花畑状態だ。世間はもう間もなく、秋だというのに。
いつもなら、なんやかんやとやり返すアルフレッドも、今はそんな気力がないようだ。


「ライラ、ん」

そんな雰囲気を感じ取ったのか、厨房担当のグノーがココアをいれてくれた。彼の持つお盆には、ちゃんと3人分乗せられている。

「ありがとう、グノー」

一通りの片付けも終わり、私も休憩に入ることにした。

「どうぞ、グノーからよ」

「ああ、すまない」

温かいココアを前にしても、浮かない顔のアルフレッド。それに対して、すっかりグノーを敵視しなくなったルーカス。うん。いつも通りね。

「で、あなたは、なにをそんなに落ち込んでるのかしら?」

一応ね、友人として話ぐらいは聞くわよ。まあ、ルーカスは不満そうだけど。

「俺のライラが、気にかけてやる必要はない!!」

「俺のってなによ……」

「マリアーナのことが解決したら、考えてくれるんだろ?そろそろ返事が聞きたい」

ちらりとこちらを見てくるアルフレッドは、私とルーカスの間にあったことを、既に知っている。ルーカスが自慢するように話したから。〝ライラがカエルの魔法を解いてくれたんだ!!〟って、マリアーナという、最愛の女性を得たアルフレッドには、なんの自慢にもならないというのに。