郁也が前みたいに戻ってくれることを願っていた。戻ってくれると信じていた。


思えば私たちは今まで、大きな壁が立ちはだかったことがなかった。


だから。


今までが幸せすぎたんだ。その分、今一気に降りかかっているんだ。きっとそう。


もしも、もうダメかもしれないと思う日がきても、絶対に諦めないと思っていた。もしも目の前に大きな壁が立ちはだかっても、絶対に乗り越えるつもりだった。乗り越えようと思っていた。乗り越えられると思っていた。今がその時なんだ。


だから。


この壁は乗り越えなければいけないもので。そうすればきっと、また笑い合える日々が戻ってくる。


でも--乗り越え方がわからない。


私は知らなかった。


そのためには、“一緒にいたい”という想いが通じ合っていることが大前提だということを。


私は考えたこともなかった。


“一緒にいたい”という想いが、一方的になってしまうかもしれないということを。