手厚い歓迎を受けた二人だが、もう一度馬車へ乗り込むことになった。
 歩く先であまりにもたくさんのプレゼントをもらい、挨拶をしてはリナローズが会話を弾ませるため、このままでは夜になっても屋敷にたどり着かないという判断である。

「君には驚かされてばかりいる」

「わたくし何かノルツ様の気に障ることをしてしまったのですか!?」

「いや、そういう意味ではないのだ。ただ俺は、君を誤解していたと」

「誤解?」

「その、いつまでも俺の婚約破棄を受け入れない楽天的な人だと、そう思っていた。君に対して苛立ちを覚えたこともある。だが君は、俺を想って行動してくれていたのだな」

 告げられた言葉をかみしめるとリナローズの瞳に涙が溢れた。

「わたくしはノルツ様の妻なのですから、当然です」

 涙を拭い、笑顔を取り戻したリナローズにノルツは安堵する。こんなにも一人の女性に心をかき乱されたのは初めてだ。

 そうして屋敷に到着したところで、またもやノルツはリナローズから驚きをもたらされた。リナローズはすでに勝手知ったるといった様子で屋敷を取り仕切るのだ。どうやら自分が追放の悲嘆に暮れている間にも、リナローズは前だけを見て突き進んでいたらしい。

 ここでもリナローズは人気者だった。結婚式さえ挙げることの許されなかった婚姻だが、ここでは多くの人が祝福してくれた。それは他でもないリナローズの人柄故だろう。追放さた夫が快く迎えられるよう、妻として環境を整え待っていてくれたのだ。

 ノルツは溢れていく愛しさをかみしめる。これがリナローズの言った愛しさが溢れそうという現象だろうか。この想いをどう伝えたものかと、ノルツは初めて抱く感情に振り回されていた。

 しかしリナローズはこともなげに言うのだ。