雨香麗と別れてから8日も時が経ってしまった。

 昨日から学校にも復帰し体調も万全な中、ずっとそのことばかりが気にかかっている。

 徳兄には昨日『お前が寝込んでた間の話は明日まとめて話す』と言われたものの、学校から帰っても徳兄は姿を現さない。痺れを切らし、自室からでて居間へと向かう。

 誰もいない居間でテレビをつけると父さんがチャンネルをそのままにしていたからか、面白くもないニュースが流れ始めた。




「最近相次いでいるのは変死体で────」

「はぁ、またその話……」




 メディアはいつもそうだ。人が不安になるようなニュースばかりを流す。もっとこう、動物のほっこりニュースとかを聞きたい。

 棚からクッキーを取り出し、そんなことを思いながら頬張っていると、あるニュースが耳に滑り込んできた。




「今回事件が起こったのは名門女学園聖皇峯です。こちらではクラス全員が一度に倒れ搬送されるといった事件が起き、警察は動向を調べております。しかしこの事件は3度目であり、いまだどの事件でも原因を突き止めることができておらず────」




 リモコンを握る、自分の震える手を見つめた。

 でもどんなに思い直そうとしても、これが霊障(れいしょう)によるものとしか考えられず、言葉を失う。しかも霊障(れいしょう)の一言で図らずも頭に浮かんだのは雨香麗の顔だった。




「……紫樹」




 はっとして顔を上げれば真っ暗になったテレビに徳兄が映る。すぐに振り返って(まく)し立てた。




「とっ、徳兄どないしよう!? 雨香麗が……雨香麗が!!」



 掴みかかる俺の肩を強く掴み返し、徳兄は落ち着けるように話し出す。




「とりあえず、聖皇峯行くで」

「うっ、うん!」

「お前に話すって言うてたことは全部、行きしなに話すさかい」




 そう言って徳兄は玄関へと歩いて行く。俺も後れを取らないよう、一度自室へ戻り、鞄だけを持ってその背を追いかけた────。