アイツが謹慎をくらってから数日……──。

 最初こそ苦しそうに寝込んでいたが、最近は起き上がる時間が増え、一日のほとんどを部屋で過ごしている。

 ……ああやって体に負荷のかかる離脱を繰り返すからそうなるんや。(げん)さんが心配して怒鳴り散らすんもわかる。

 起き上がれるようになってから、部屋を訪れる度アイツは座禅を組んでいた。飯は運んでやってるが……あの様子を見るに、ほとんど飲まず食わずや。

 一度、「なんしてん」と突っ込んだことはある。けど返ってきたんは「朱紗にコンタクトをとってる」の一言だけ。

 アイツ、少しも諦めてない。

 1人で神憑(じんひょう)なんかできひんのに、できるわけあらへんのに、それを成し遂げようとしはる。

 そんな日が続いて、次第にオレの苛立ちが後悔へと変わり始めた。

 悔しいけど、兄貴が命懸けで守った奴や。今度は代わりにオレが守るって決めてん。守らな、兄貴に顔向けできひん。

 それにコイツは理不尽な怒りをぶつけたオレのことを少しも責めなかった。
 あそこで言い返してくれてもよかった。殴りかかってくれてもよかった。オレは、それくらいの気持ちやってん。せやのに、アイツは……。

 こないな奴、許されへん、けど……ここまで何かに執着する理由(わけ)が知りたかった。




「……なんで僧侶(そうりょ)でもないお前が、懸命にそないなことしはるん」




 いつまでも同じような状況が続く中、オレの方が痺れを切らして投げやりにそう問う。すると柴樹は疲れた顔をしながら口を開いた。




「救いたい子がおるから」




 救いたい子? コイツは、そない個人的なことで神様頼ろう思うてはるんか。

 一度冷めた怒りが再びふつふつと沸き上がる。




「……そこまでして救う価値のある子なんか?」