体の不調はまだ完全には癒えず、学校も1週間ほど休むことになってしまった。

 宗兄(かずにい)はあれからまともに口をきいてくれない。それだけあの出来事が深い傷をつくっている、ということなんだと思う。

 神柱(かみばしら)という肩書きを、わずか5歳で背負ってしまった俺の扱いも気に食わなかったはずだ。
 皆が皆、俺のことを腫物のように扱う。俺に何かあれば、この体に巣食う朱紗(すさ)を、〝朱紗萩吏凰ノ御琴(すさはぎりおうのみこと)〟を怒らせることになるから……。




「柴樹、入っていい?」




 物思いに耽る布団の中、聞き覚えのある声が耳に滑り込んで来た。体を起こしながら返事をすれば襖が開かれる。




「……どうしたの、瑮花」




 そこには不安そうな顔をした瑮花が立っており、遠慮がちに部屋へと足を踏み入れた。




「その……柴樹が学校に来なくなったから」

「心配してくれたんだ。ありがと」

「心配っていうか……うん……えと……」




 なんだろう。今日の瑮花はなんか変だ。瑮花から後ろめたさのようなものを感じ、その顔を覗き込む。




「なに?」




 そう問えば瑮花は一瞬息を呑み、小さくため息を吐いてから話し出してくれた。




「……さっきそこで、すごい威圧感のあるおっきい男の人とすれ違ったんだけど、柴樹のこと聞いたら『体調崩されてます』って言われて……それで……」




 一度俺の顔色を(うかが)うように見て瑮花は続ける。




「まさか、あたしがあんなこと言ったから、柴樹、また離脱しちゃったんじゃないかって……そのせいで危険な状態だったらどうしようって……」




 ……心配っていうか、不安にさせちゃったかな。でも、決して瑮花のせいじゃない。




「そんなこと、気にしないでよ。俺の意思で行動したんだから。それに……──」