モヤモヤした気分が晴れないまま、夜の撮影時間を迎えた。


「誰に聞けばいいんだろう……?」


辺りを見渡すと、台本を読み合わせしている涼と舞。


涼に舞さんが好きになったの?なんて聞けるはずもない。

付き合うことになった。なんて言葉を聞きたくないから。


舞は怖いから苦手で、何も話す気になれない。


スタイリストにヘアメイクをしてもらっている紫音は、あれからも一緒にいたが、その話には一切触れなかった。


どうしよう………


何かこのままだと嫌なんだけど……


悩んでいる渚の元へ、紫音がやって来た。


「もうすぐ撮影始まるよ?さっきから元気ないけど、緊張してる?」


「えっ……まぁ……」


紫音と渚の次の撮影のシーンは、花火が上がる中での紫音からの告白。


緊張しない方がおかしいのだが、渚はそれどころではなかった。


プロの役者は、プライベートを仕事に持ち込まないものだが、思春期の素人である渚に、まだそこまでの意識などない。


どうしても涼と舞の関係の方が気になってしまう。