渚は、幼稚園時代の芸能界に入るきっかけを話しながら、紫音と一緒にホテルに向かって歩いていた。


「これがスタートなんですよ~?もし涼が王子様になってたら、ここにいなかったかも知れません」


「なんか凄いね?」


「凄い……?」


「渚ちゃんの発想力というか、母性本能というか。
相手が馬だけに手綱捌きが上手いって~。
おあとがよろしいようで
ジャン♪ジャン♪」


クスクスと笑う渚は、遠い存在だと思っていた紫音が、少し身近に感じた瞬間だった。


紫音はもっと気取ってて、100%王子様のようなキャラだと思っていたのに、自分の長い話を聞いてくれて、楽しそうに落語のようなオチまでつけてくれる。


「それって紫音様は、私を褒めてくれてるんですか~?」


「本当に凄いと思うよ?幼稚園の頃の話なのに、うちの母さんみたいな事を言うなぁ?ってね」


「紫音様のお母さん?」


「俺は戦隊シリーズじゃなくて、アイドル歌手だったけどね?」


紫音は涼に馬の役を頑張らせる為に、渚が持ち出した戦隊ヒーローの主役の話に感心していた。


紫音の母親も、憧れのアイドル歌手のようになるために頑張りなさい。と言っていたのだ。


それと同時に、なぜ普段はつれない態度を見せている涼が、渚に必死なのか?
という構図も見えてくる。


二人は兄妹のようで、時に姉弟のような存在だと感じた。