学校からホテルまでの道中。

出演者達か帰路につく人波の中に、紫音と渚の姿もあった。


「紫音様って何年間、芸能界にいるんですか?
私はバンドでデビューしてからの、2年くらいしか知らないんですけど……」


渚は監督の言っていた
「何年芸能界にいるんだっ!!」
という言葉に引っ掛かっていた。

ここ2.3年の活躍なら、何年という怒られ方はしないだろう。


「ん?10年くらいかな?
全く売れない子役してたから」


「へぇ。紫音様が子役?全く知らなかった~。」


「別に隠すつもりもないけど、
現代に舞い降りたプリンス。
なんて言ってて、実際は全く売れない子役でした。
なんて、夢がないだろ?」


「それもそうですけど。
紫音様なら、子供の頃もカッコよかったんだろうなぁ」


今の紫音の背を低くしてみたり、体を小さくしてみたり、渚は色々と想像していた。


「別にそうでもないよ。普通の子供だったし。
ところで渚ちゃんは、なんで芸能界に入ろうと思ったの?」


「えっと……きっかけは、ずいぶん前の話なんですけど……」


渚は芸能界を目指すきっかけを、思い出しながら話し始めた。