撮影も順調に進んで1週間が過ぎた。


「おはようございますっ!!」


元気な声で渚が挨拶して、女子の休憩所に使っている教室に入った。


すると教室の真ん中に、腕を組んで、足も組んでいて、態度の悪い女子生徒が椅子に座っていた。


「ちょっと!!私、喉が乾いた。
お茶買ってきてよ?
ホントにあんたって気が利かないわね?」


25歳前後の女性マネージャーが、慌てて買いに行くと、渚はその女子生徒が誰なのかを、すぐに思い出した。


「あっ……この人……」


ガムを噛みながら、偉そうな態度で座っているのは、

佐南 舞(さなみ まい)
高校3年。

大人気女性アイドルグループ【虹色シスターズ】のセンターで、紫音と同じ学校に通う同級生。

配役は渚の親友のクラスメイト役。


今ここにいるほぼ無名の出演者とは違い、美人で華麗でオーラが全く違う。


舞その綺麗な瞳で、渚を睨み付けた。


「何をジッと見てるの?そこのおチビさん?」


「あっ……ごめんなさい……」


渚は慌てて自分の席に座り、メイクを始めた。


舞さんは私の親友のクラスメイト役なんだよね……


テレビでは綺麗でニコニコしてて、優しいお姉さんって感じなのに……


本当はすごく怖い人なんだ……


舞の強烈なインパクトに、衝撃を受けた渚は、どんよりとした重い気持ちになってしまった。