年が明けた。


初日の出や鏡餅、正月飾りの紅白の餅花に門松と、街中が縁起のいいもので溢れ返るおめでたい日に、私は絵里ちゃんの家で、寒い外を羨んでいた。

暖房の効いた部屋の中、ホットカーペットに腰を下ろし、下半身をこたつで温める。

話には聞いていたけれど、まさかこれほどだったとは。

おまけに恵理ちゃんに至っては、雪うさぎの半纏まで羽織っている。

ちなみに、この家には私達二人しかいない。ご両親と妹さんは、温泉旅行に出かけている。温泉があまり好きではない恵理ちゃんは、家で一人お留守番だそうだ。


「別に温泉自体が嫌って訳じゃないんだけど、猿と混浴はちょっと、ね」


今時温泉に猿なんてそうそういないと思うけど。という言葉は飲み込んで、さっき一緒に作ったおしるこに口をつける。あんこの甘さに混じって、小豆の感触が舌に乗った。粒餡と切り餅とちょっとの塩で作ったおしるこは美味しいけれど、今は冷たい緑茶が恋しい。



「そういえば優希ちゃんって、樹の家行ったことあったっけ?」


おしるこに飽きて豆大福に手を伸ばしかけていた彼女に問われ、口の中に入っていた餅を飲み込んでから首を横に振った。

多少打ち解けてきたとはいえ、ついこの間までは冷戦状態だった仲だ。ましてや名前すらも覚えていなかったというのに、どうして家になど行けるだろうか。


「そっかー、ないのかー」


懐かしい時代に思いを馳せている私とは対照的に、恵理ちゃんは悪戯っぽい顔をしてなにかを考えれ込んでいる。やがね、にやーっとした笑みを浮かべこたつから出て立ち上がった。


「ちょっと、見せたいものがあるの」


篠原の家と見せたいものがどう繋がるのかは分からないが、やっと外に出られることに安心し、そっと胸を撫で下ろしたのだった。