「……さま、…あさま」

ん……?眩しい……

「心愛様。いい加減にしてください!遅刻しますよ?」

え……?まだ眠いわ……今日は……

「…はっ!今日始業式じゃないっ!」

一気に覚醒する。目を開けると、見慣れたベッドの天蓋と、男の顔。

「おはようございます。やっとお目覚めになりましたね。新学期早々遅刻決定ですよ」

朝っぱらから乙女の部屋にズカズカ上がりこんでいるこの男は、わたくしの専属執事、兼幼馴染の一ノ瀬 優雅(いちのせ ゆうが)

代々うちに仕える一ノ瀬家の次男である。

ちなみに、長男の優弥(ゆうや)は7歳年上で、お父様の補佐をしている。

「わたくしとしたことが……!寝坊をするなんて!」

「そうですね。昨夜は珍しく夜中まで裁縫をなさっていたようで。何を作っていたんですか?」

「内緒よ、内緒。あんたなんかに教えてやる義理なんてないわ」