「天城 絃さんですね。…えーっと、特別な資格は何かお持ちですか?」


「資格…は、学校で取った漢字検定くらいしか、とくになくて…」


「なるほど。…16歳まで施設育ちなんですね」



消えそうな「はい」が、自分の口から出た。


初めての面接、初めて身に付けるスカートタイプの黒スーツにパンプス。

面接官は2人。



「アルバイト経験などはありますか?」


「それも…ないです、」


「わかりました」



わかりました、なにがわかったんですか。

私は何も分かりませんけども。


何ひとつ取り柄のない天鬼 絃を思い知らされただけなんですけども。



「では、弊社を応募してくださった理由をお聞かせ願えますか?」


「はい。私は元々なにかを作ることが好きで───」



たまたま良さそうだったから。
パッと目に入ったから。

学校が勧めてくれたから。


それが応募理由です、なんて言えるわけないでしょ……。



「ここは大卒の社員が多いので、高卒となると派遣社員のような扱いになってしまうんですが…」


「え、そうなんですか…?でも募集要項にはそんなこと…」


「あぁ、去年のデータがまだ訂正されてないサイトもあったりして」



なるほどそうですか。

嘘を書いた、ということでよろしいですね?

そんな言い訳、見抜けるんだよバーーーカっ!!


……これも、言えるわけがない。



「落ちた。ぜったい落ちた…、」



とぼとぼ帰宅する夕暮れ空の下。

こんなのやってられるかっての…。



「だいたい施設育ちって知ってからの顔がおかしかったしっ!」



どうやら人生初面接とやらは期待できない結果となった。