こいつ……!!!!


わさびだ。

奥手だと言われたことがそんなにも勘に触ったのか、ネタとシャリの間にたっぷりとわさびが練り込まれていて。


そうだ、こいつはこーいうヤツだった。



「ごほっ…!ひなた…っ!!なにすんの…!!かっらぁぁぁっ」


「え?なんのこと?」



とぼけんなっ!!
確実に確信犯でしょ…!!

どおりでそんな優しさ発揮してくるなんておかしいと思った…!!



「大丈夫ですか絃ちゃん…!!これ、お茶どうぞ!」


「ありがとう桜子ちゃ───あっつ…!!!あっっっ…つっ!!」


「ご、ごめんなさいっ!!熱いのしか用意できなくて…っ」


「そーいうの先に言おう!?!?」



こんなときに桜子ちゃんの天然が炸裂。


待って、これ私の就職祝いなんじゃないの…?

今日の主役って私だよね?
なんでこんな扱いされてるの…?

これであってるの…?



「あははははっ!いやー、めでたいねぇ。いろんな意味でめでたいや」


「……こいつ…」



桜子ちゃんも笑ってるし、なにこのドSカップル…。

あ、でもまだ付き合ってないんだっけ。
……いやいやもう要らんこと言うな私。

さすがに2度はキツいぞ。



「ほら桜子。ここの回ってるお寿司、好きに取ってぜんぶ食べていいんだよ」


「えぇ!?ぜんぶいいんですか!?」


「うん。回ってないのも注文できるから遠慮なくどうぞ?」


「わぁ!いただきますっ!!」



……中々いいんじゃないの、このふたり。

本当に陽太は彼女のことが好きらしいと、その優しい眼差しで分かってしまう。