週が明けると、大学は一気に学祭の興奮をかき消すように地味な日常に姿を変えた。

私は相変わらずミジンコの世話をする。
寒くなってきたからちょっと気を使う。

環境が悪化すると、わざわざ理仁がホルモンを注入しなくてもミジンコはオスを生む。

だからなんだって話だけど、オスが生まれてくるということは、私たちの世話が手抜きだということだ。
オスが見つかるたびに、「ちゃんとやろうね」って注意喚起を行う。

そんなミジンコよりメダカの世話の方が大変だった。

管理不足で大量発生してしまったミジンコをメダカの水槽に投入する。
食物連鎖。
ミジンコはメダカにとっていい餌らしい。

たくさん食べて大きくなってね。

水槽の掃除をしていた時だった。

「こんにちはー」

聞き覚えのないクリアな声が研究室に響いた。

私だけではなく、李さんも、ガルシアさんも、根本さんも、理仁も、そして教授も、その他院生の子たちも瞬時に声の方を振り向く。

ドアのところに勝田エリーが立っていた。
本当に来た、準ミス。

研究室にいたみんなが顔を見合わせる。
私はお目当てを知っているけれども。
こんな美人がなぜうちのミジンコ研究室に?という表情だ。