学祭の朝は気持ちいいほどに晴れ渡っていた。

11時に理仁の部屋に向かう。
あの人、ちゃんと起きてんのかな。

2階建てのアパートの1階。
103。

インターホンを鳴らす。

中から雑な「はい!」が聞こえてきた。

「きたよー」

私も返すと、ガチャッとドアが開いた。

昨日ぶりの理仁。
そしてすごい部屋着なんだけど。

「さっき起きた」
「やっぱり」

私なんて全然落ち着かなくて朝6時に起きて7時には朝ごはん食べて、さっきもまた軽くお菓子食べてしまったのに。

「もう行くの?」

理仁が眠気を乗せた口調で言う。

「ちょうどいいんじゃない?」
「待って、ちょっと着替えるからどっか座ってて」

そう言ってフラリと部屋の奥へ消える。

どっか座ってて、って。

私は仕方なく玄関に腰掛けた。
片付いてはいないけど、物がない台所を見る。

「そこの皿たち3日前のー」

聞いてもいないのに、向こうからわざわざ理仁が言ってきた。

「ええー、彼女だったらひいてるよ」

そう言ったら顔だけピョコッと出してきた。

「洗いたかったら洗っていいよ」

誰が洗うよ。

しゃがみ込んだまま動かなかった。

「あ、これうちの親が送ってきたやつ、飲む?」

理仁が缶コーヒーを見せてくる。

「それは飲む」と言って手を伸ばす。
ひょいと投げてきたのでキャッチ。