中都大学工学部 応用生物科学科 奥田研究室。
ここではミジンコの生態について研究している。

学部生含めて20人。

私、森里環(もりさとたまき)は、ここの博士課程1年。

同じように院の修士課程で卒業することなく、博士課程にまで進んでるのはわずか5人。

博士課程1年目は私以外にもう一人。
ミジンコ馬鹿の林理仁(はやしりひと)だ。

今、彼は顕微鏡で愛しのミジンコの卵を見ている。

「何してんの」

「今話しかけないで」

見ると、右手のピペットが緊張感を持ってわずかに動いている。

「はーい」

邪魔にならないように壁際の水槽前に行く。

数十個並んだボトル。
ミジンコの繁殖をしている。

私の愛しの人、理仁は今、ミジンコの遺伝子操作に夢中だ。