「がんばれー!」


色んな人からの応援を受けて、俺、如月 柊樹は、コートをボールとともに全力疾走した。




今は、俺の学校で隣の高校との試合真っただ中だ。

毎年、夏休み前の七月にサッカー部同士で試合をする。毎回なかなかいい勝負で、去年は引き分けに終わってしまった。

何とかして今年は勝ちたい。そう意気込んで俺たちは今日までたくさん練習をした。試合が始まる前には、円陣も組んだ。

全力を出し切って悔いのない試合にしたい。


前を走る選手、優斗にパスを出す。そこから蒼へ。しかし途中でカットされてしまった。さっきからこれの繰り返しだ。

マネージャーのみんなが、声を張り上げて応援してくれている。何とか一点でも決めたい。1点でもリード出来たら、大きい。そう思いながら、相手高校がパスしようとしたボールをなんとかカットして、部員のみんなとさっきのようにパスをしあいながら、ドリブルでゴールまで向かう。
今だ、と俺の体の中の何かが感じた。すかさずシュートを打つ。


「ゴーーール!」


審判が叫んだ。

よし、決まった。

みんなから、歓声が上がる。

ちょうど前半が終わり、ピー、と笛が鳴った。10分だけ休む時間だ。体力回復にはじゅうぶん。

ベンチに入ると、マネージャーのみんながタオルとスポーツドリンクをセットで渡してくれる。

俺は近くにいた桐生からもらった。


「すごいね!かっこよかった!!」


と、言ってくれた。これだけで俺は後半に向けて、相当元気が出た。

しかし、そのあとで、彼女がふらっとしたのを俺は見逃さなかった。


「だいじょうぶ?」


俺が最後まで言い終わらないうちに、桐生は俺の方へ倒れこんでしまった。相当な汗だ。俺も、周りのみんなも驚いて固まってしまった。

すると、優斗が


「やばいじゃん!」


と言って、みんなは我に返った。

俺は桐生を背中におぶって保健室へ猛ダッシュする。着いたときには、相当息が上がっていた。


「ちょっとどうしたの。大変大変。」


保健の山田先生が慌てて桐生の熱を測った。


「あらやだ、38度もあるじゃない。」


そう言っている間に俺は桐生をベッドに寝かせておいた。


「試合があるのでいったん戻ります。桐生のこと、よろしくお願いします。」

「はーい、がんばってね。」


俺は山田先生にペコっと頭を下げてベンチに戻った。