それから、


「口は堅い方だと思うけど。」


そう言われて、少し安心した。よし、と気合を入れて話し始める。


「えっとね、陽は如月のこと好きなの。で如月も陽のことが好き。あー、今は両片思いってやつ?このまま放っておいたら、あの二人ずーっとこの関係性のままだと思うの。だから、あの二人をくっつけるお手伝いをしてほしいなって思って、聞きに来たんだけど。」


OK出してくれますようにと、願いながら言ったら、すこししてから、


「うん、いいよ。やっぱり、桐生も柊樹にその気があったんだね」


と一ノ瀬から返ってきた。

意外にあっさりOKが出たので、私は少し驚いた。だって、ヤダそういうの無理、とか言われそうじゃん!
 
相当びっくりしてしまったので少し間が開いてしまった。その沈黙を破るように、一ノ瀬が聞いてきた。


「でもさ、俺必要?」

「必要必要、超必要!私まだそこまで如月のこと知らないから、作戦考えてもうまくいかない時もあるだろうし、一ノ瀬がいたらもっといいのが考えられそうだし!」


私は即答する。
 
一人で出来たらとっくにやってます!
 
それからはっと、思い出して私は慌てて言った。


「何があっても、佐伯には言わないでね。」

「なんで?」

「あいつ、絶対顔に出るから。ババ抜きとか苦手でしょ。」


そう、私は如月を観察している間に、佐伯と一ノ瀬のこともどんな奴か見させてもらっていたのだ。そしたら佐伯、表情が全部顔に出るんだもん。こりゃだめだ、と思ってこの話をするのは一ノ瀬に決めた。


「へぇー、よくわかってんじゃん。」


ちょっと感心したように一ノ瀬が言った。


「あと、華は、顔じゃなくて声に出るタイプだから。」

「どういうこと?」

「えーっとね、顔には出ないけど、嘘ついてる時の華めっちゃ棒読みか、すっごい噛むか。」


だから、華が嘘つくとすぐバレる。


「なるほどね。じゃあ、これは二人だけの秘密ってことで。ん。」


そう言って一ノ瀬が出してきたのはスマホだった。


「毎回ここで話すわけにはいかないでしょ。連絡先交換しないの?」


え、まさか、一ノ瀬がここまで徹底してやってくれるとは思わなかった。そう言うと、


「一年のころからずーぅっと片思いしてた友だちの恋が実るかもしれない、なんてなったらもちろん話にのさせてもらいますよ。」