だが、こんな俺にもチャンスが訪れた。

一緒に学級委員をすることになったのだ。
桐生には、「初めから」やろうと思ったけど自信が無かった、と言っていたが本当は、「桐生が学級委員になると決まった瞬間から」俺はやろうと思った。

だが、桐生に俺は不釣り合いなんじゃないかというのが頭をよぎり躊躇してしまっている自分がいた。

そこを蒼が、推薦という形で救ってくれたのだ。


しかし、一緒に学級委員になったところで何をすればいいのか分からなくて、俺は何もできなかった。結果、この恋は進展したのか、していないのか、よくわからない状況にある。
 
真正面から話しかけようと思っても、なんだか恥ずかしくなって、すれちがいざまに一言言えただけだった。

桐生のことも、普段女子を呼んでいるように、下の名前で呼ぼうとしたが、口から出てきたのは彼女の名字だった(現に心の中でも呼べていない)。
そのうえ、向こうから話しかけてきてくれても、相槌を打つことしかできず、ぶっきらぼうに思われたかもしれない。
 
俺が桐生のために何かできたのは「このクラスと学年をいいクラスにしたい」という彼女の思いの助けになるように、学年目標の案をたくさん考えた、それくらいだ。

思っていたより恋におく手だった俺に、蒼も優斗も、俺自身も相当驚いていた。

しかし、その二人だって俺と同じように恋愛経験はゼロ(本気にさせる女子がいなかったらしい)。
三人でいくら頭をひねらせても、何をしたら彼女に振り向いてもらえるかなんて、いつまでたっても分からなかった。



ーガラガラ


保健室のドアが開く。

 
誰が来たんだろう?
 
シャー、という音とともにカーテンが開いた。桐生の友だちの、、、南見と小川だ(この二人は別に名前で呼んでもいいが、桐生だけ名字呼びだと怪しまれそうなので)。


「何してんの?」


と、南見に聞かれて、


「ちょっと寄っただけ。桐生ダイジョブだったかなーって思って。」


と、言っておいた。

まさか、試合が終わった後、速攻でここにきて、そのあと桐生のことを好きになったきっかけを思い出してました、なんて言えるわけがない。


「ふーん。」


南見がそう言った。二人とも納得してくれたようでよかった。
 

「俺、蒼と優斗のとこ、行くから。じゃあな。」


本当はもう少し桐生のそばにいたかったが、なんとなく南見にそういうの勘付かれそうだったので、しぶしぶ俺は保健室を後にし、二人の待つ校庭に向かった。