そんなこんなで……
 売店で大好きなクリームパンと無糖(むとう)の缶コーヒーを買った後、私と成瀬君はランチをとるため屋上へやって来た。
 ここは何もなく、普段から人が少ない。

 だから私はたまにひとりでのんびりランチしたい時、ここへ来る。
 今日も誰もいなかった。
 これで成瀬君目当ての女子達から「何この子?」みたいな目で見られる事もない。

 しかめっつらの私を見て、成瀬君は言う。

「何だよ? ゆい、機嫌(きげん)が悪いな」

 いやいや(ちが)うって。
 私が最初から機嫌が悪いんじゃない。
 
 君があまりにも、なれなれしいのだ。
 それで君のファンだという女子達が過敏(かびん)に反応してるんだって。

「違う。元々機嫌は悪くない。私の機嫌を悪くしたのは成瀬君だよ」

「ええっ、何でだよ? 俺のせいか?」

「うん、どういうつもりなのか知らないけど、いきなり来て、ゆい~! 一緒にメシくおうぜぇ! はないと思うけどなあ」

「はあ? 俺、お前の事、親しみを込めて呼んだだけじゃん」

「いやいや、良く考えてみてよ」

「何を?」

「周囲はさ、私と成瀬君が友達になった事を知らないし、君のファンの女子達からやっかみをうけるのも、絶対やだ。はっきり言って迷惑(めいわく)

 はっきり言って迷惑。

 私はいつも思った事をはっきり言ってしまう。
 数すくない友だちとケンカになりかけた時もある。
 でも思いやりのない人とは付き合えない。

 さあ、成瀬君はどう言ってくるのか?
 私は彼から次に来る言葉を待ったのである。