翌日……
 午前(ごぜん)授業(じゅぎょう)が終わった昼休(ひるやす)み、いつものように私は教室で「うだうだ」していた。

 ウチの学校は給食(きゅうしょく)がない。
 学食(がくしょく)へ行くか、売店(ばいてん)でパンを買う。

 私のお昼は、菓子(かし)パンやサンドイッチ、そして「そうざい」パン。
 一番好きなのはクリームパン。
 チョコやあんこも大好きだから、たまに2色パンやあんぱんも買う。
 ちなみに、冬には(あたた)かいアンマンも良く買うのだ。

 話をもどせば、授業終了後(じゅぎょうしゅうりょうご)は、お(なか)をすかせた生徒達で学食や売店は大混雑(だいこんざつ)する。
 だから少し時間を置いて行くのだ。
 その方がスムーズに買える。

 お昼休みに入って15分ほどたち、「これから売店へ行くか」と思った時、いきなり事件は起こった。
 昨日い~っぱい話した『男子』の大声(おおごえ)が聞こえて来たのである。
 その声のぬしは、教室の入り口に立っていた。

「お~い、ゆい~! 一緒にメシくおうぜぇ」

 わお!
 びっくり!!

 成瀬悠真(なるせゆうま)くん!?
 なぜに?
 そんなに、にこにこして(うれ)しそうに手を振ってる!?

 「ゆい~!」だと!?
 おいおいおい!
 君はどうして?
 親しげに、私を下の名前で呼んでいる?

 きのうは成瀬くん、三島と、みょうじで呼び合っていたはずだ。
 それに君はとなりのクラスだ。
 学校一のモテ男で人気者の君ならば、わざわざ私のクラスに来なくとも、一緒にランチする友だちはい~っぱいいるはずだ。
 そして一回話しただけの私をさそう理由(りゆう)がない。

 案の定!
 周囲の女子達も、おどろきのあまり、かっちこちに固まっていた。

「ね、ねえ、今の何?」
三島(みしま)が? 悠真様(ゆうまさま)から? 呼ばれた? それもゆいって、名前で!?」
「し、信じられないわ!」
「そら耳よ、そら耳」
「ぜったいに幻聴(げんちょう)でしょ?」

 男子も含め、ざわざわしだした中を……
 「ずかずか」とウチの教室へ入って来た笑顔の成瀬君は、
 「よお! ゆい~!」と再び私の名前を呼んだのである。