こうしてうちのクラスは体育祭で総合優勝を果たし、いよいよ後夜祭が始まった。

「これより、後夜祭が始まります。フォークダンスに参加希望の方は、グラウンドに集まってください」

 そんな校内放送を背に、私は一人教室へと戻った。

 フォークダンスを一緒に踊る人もいないしね。

 八乙女くんとは……リレーが終わってから一度も顔を合わせていない。

 リレーの後、八乙女くんはクラス優勝に貢献したヒーローとしてみんなに揉みくちゃにされてた。

 クラスメイトみんなから祝福されて尊敬される八乙女くん。そんな八乙女くんの姿を見ていると、やっぱり自分とは住む世界の違う人間だなあって思った。

 それに――。

 “ もしうちのクラスが優勝したら、その時に告白しても良いかなって思ってる”

 保健室で聞いた、八乙女くんの言葉が頭の中にフラッシュバックする。

 好きな人に告白するのに、私なんかがいたら邪魔だよね。

 グラウンドのざわめきが遠くに聞こえる中、私は一人、こっそりと教室に帰った。

 荷物をまとめ、帰る準備をする。

 八乙女くん、今ごろ恭介くんに告白してるのかな。

 窓の外では、先生たちがグラウンド中央部に薪を運び込んでいるのが見えた。

 いよいよ体育祭のラスト、フォークダンスの始まりだ。

 さて、フォークダンスは強制じゃなくて自由参加だし、私は具合が悪いふりをして帰ろうかな。

 そんな風に思っていると、ガラリと教室のドアが開いた。