放課後になっても、胸のドキドキは収まらない。

 八乙女くん、雪乃ちゃんたちから私を助けてくれた時、「大切な人」って言ってくれたよね?

 それってどういう意味なのかな。
 ちょっとは期待してもいいのかな?

 “ それってデートじゃん”
 “絶対、八乙女くん若菜に気があると思う!”

 サエちゃんが以前言ってた言葉も思い出し、カーッと顔が熱くなる。

 そ……そうなの!?

 まさか本当に、八乙女くん、私のこと――。

 ぼんやりとしたままトイレに向かい、教室に戻ると、八乙女くんたち男子数人が何やらウワサ話をしていた。

「なあなあ、八乙女、最近お前、若菜さんと仲良いよな」

 男子のうちの一人がニヤニヤしながら八乙女くんの肩に手を置く。

「ま、まあ、そうかもね」

 曖昧な表情を浮かべる八乙女くん。

 仲良いってことは否定しないんだ。

 何となく嬉しい気分になる。

 別に聞き耳を立てるつもりじゃなかった。

 でも、教室の中に荷物もあるし、自分のウワサをされている中、堂々と入っていく勇気もない。

 早く男子たちが居なくならないかな、そう思いながら廊下に立っていると、今度はこんな声が聞こえてきた。

「ひょっとしてお前、若菜さんとつきあってんの?」