「ねぇ、若菜、今度の日曜日、何か予定ある?」

 サエちゃんがスケジュール帳片手に尋ねてくる。

 日曜日――その日は、八乙女くんと約束が!

「あ……えーっと、実はその日は予定が……」

 しどろもどろになりながら答える。
 実はその日は、八乙女くんとお買い物に行く約束をしてるんだ。

「そうなの。どこか行くの? 私、その日イベントに行ってみようと思うんだけど」

 身を乗り出してきたのはモカちゃん。

 サエちゃんが言う「イベント」というのは、アニメのコスプレ撮影会をしたり同人誌を売ったりするイベントのこと。

 コミケみたいに大きなイベントではないけれど、私たちの住む町でも定期的に開かれているらしいの。

「何か予定でもあるの? 無ければ一緒に行こうよ」

 ウキウキとしながらイベントの予定を語るサエちゃん。

 どうやらその日、サエちゃんはコスプレをして同人誌の売り子をするみたい。

 いいなあ。サエちゃん、美人だしスタイルも良いから似合うだろうな。でも――。

「ご、ごめん……その日は予定があって」

 私が断ると、サエちゃんは少し不思議そうな顔をした。

「そうなんだ。何だか最近、若菜、付き合い悪いよね」

「そ、そう!? ごめん……」

「あ、いや、別に責めてるわけじゃないんだけどさ、ひょっとして彼氏でもできたのかなーって」

 か、彼氏!?

 頭の中に八乙女くんの顔が思い浮かぶ。

 無い無い! 絶対に違う!

 慌てて否定する。

「えっと……ううん、別にまだ彼氏ってわけじゃ……」

「『まだ』ってことは、そうなる予定がある人がいるってこと?」

 よ、予定だなんてそんな!

「い、いやいや、そうなる予定があるわけじゃないんだけど――」

「でも、そういう関係の人はいるってこと? どうして今まで話してくれなかったの。友達なのに」

「えっと――」

 サエちゃんに問いつめられて、しどろもどろになる。

 ど、どうしよう。八乙女くんとのこと、サエちゃんに話したほうがいいかな。