そして、次の日曜日。

「ほら、このお店だよ」

 八乙女くんが青い屋根に白い壁のオシャレなお店を指さす。

「わあ、可愛い」

 まるで小人が住んでるお家みたい。

「だろ? 若菜さんも好きだと思ってさ。入ろうぜ」

「うん!」

 私たちは、青い屋根のお店のドアを二人で開けた。

 今日の乙女チック同盟の活動は、駅前に新しくできたという雑貨屋さんに行くこと。

 先週の日曜日はカラオケ、その前はカフェ。

 なんだかここ最近、毎週のように八乙女くんと出かけてるなあ。

 まあ八乙女くんは趣味も合うし、優しくていい人だし、良いんだけどさ。他に約束があるわけでもないし。でも――。

 チラリと八乙女くんの整った横顔をのぞき見る。

 八乙女くん、一体どういうつもりで私の事誘ってるんだろう。

 いくら乙女チック同盟を組んでるからって、男の子と女の子が二人っきりで遊びに行くのって、そんなに普通なことじゃ……ないよね?

 八乙女くんがクルリと振り返る。
 しまった。八乙女くんのことをじっと見てたの、バレたかも。

「ん、どうしたの、若菜さん。何か良いものでもあった?」

 慌ててブンブンと首を横に振って笑顔を作る。

「う、ううん。八乙女くんは何か買うの?」

「うん、俺はこのブックカバーが良いかなって」

 八乙女くんが若草色のブックカバーを手に取る。

「わあ、可愛い。私もちょうどブックカバー欲しかったんだよね」

「本当? じゃあおそろいにする?」

 おそろい――。

 いや、さすがにそれは。

 私は八乙女くんが手に取ったブックカバーの隣にあった色違いを手に取った。

「じゃあ私は、こっちの桜色のにしようかな」

「いいね、色違い」

 二人でレジに並ぶ。

 私が先に会計を済ませ、八乙女くんを待っていると、ふとレジの横にあった白いお花のピンが目に止まった。

 わあっ、可愛い。

 これは……マーガレットがモチーフなのかな?

 小さくて可憐な花に、胸がキュンと高鳴る。

 でも、ちょっと学校につけて行くには派手かな?

 うーん。

 これ一個だけだったら買いたいけど、でも今日はもうブックカバーも買っちゃったし、これ以上買うと買いすぎかな。

「それ、欲しいの?」
 
 私がアクセサリーの棚の前で悩んでいると、八乙女くんがお花のついたピンを手に取った。

「わあ、可愛いね。これ、絶対に若菜さんに似合うよ」

「そ、そうかな。でも、派手すぎない?」

「全然大丈夫だよ。これより派手なの付けてる子、たくさんいるし」

 でもそれって、クラスの中心のキラキラした子だから似合うんでしょ。

 私みたいな目立たない女子がつけてたら変だよ――という言葉を飲みこみ、笑顔を作る。

「うん……でも今日は買いすぎだし、やっぱりやめようかなって」

 私はピンを棚に戻した。

「ふーん」

 すると八乙女くんがレジの方に歩いていった。手にはさっき私が棚に戻したピン。

「えっ、あの」

「いいよ、買ってあげる。いつも俺に付き合ってくれるお礼」

 八乙女くんはすました顔で言った。

 えっ……ええ!?

「あ、ありがとう……」

 ど、どうしよう。八乙女くんに買ってもらっちゃった。