……というわけで、次の日曜日、私と八乙女くんは一緒に映画を見に行くことになってしまった。

 ああ、どうしよう。男の子と遊びに行くなんて初めて。

 これはただの乙女チック同盟の活動。

 別にデートとか、そんなんじゃない。

 だけど――相手はあのバスケ部の王子様。

 一体、どんな服着ていったらいいんだろう。

 仮にも王子様と呼ばれている人の隣を歩くんだし、ダサい格好だと浮いちゃうからちゃんとしなきゃ!

 とはいえ、私の私服って黒とか灰色とか、地味な服ばっかりなんだよね。

 うーん。

 私は少し悩んで、シンプルな紺色のワンピースを選んだ。

 うん。まあ、無難だし、これでいいか。

「これでよしっと――って、きゃあ、時間っ!」

 そうこうしているうちに、時間ギリギリになってしまう。

 し、しまった!

 遅刻、遅刻!

 本当は髪を巻く予定だったんだけど、それは無し!

 とりあえず黒のキャスケットを被って誤魔化す。

「急がなきゃ!」

 ぜえぜえと息を切らしながら走る。
 えっと、待ち合わせ場所は、駅前の時計台の前だよね?


 ――いたっ!

 駅前に着くと、背が高いこともあり、八乙女くんがどこにいるのかすぐに分かった。

 ていうか、足長いなあ。顔が見えないのに、遠くからでも雰囲気だけでイケメンって分かる。なんだか凄い。

 すると八乙女くんが私に気が付き、手を振ってくれる。

「若菜さん、こっちこっち」