森の奥にひっそりとたたずんでいる洋館。


そこがあたしの家だった。


どうしてここにいるのかと言えば、ここがあたしが生まれた土地であるからだった。


当時はひとつひとつの家が大きくて、それほど裕福ではないあたしの家もこのくらいの広さがあった。


両親が死んでひとりで生きていくことになったときこの土地を離れたが、ことあるたびに戻ってきていた。


その都度形を変えている自分の家にとまどったし、全然知らない人が暮らしていることもあった。


この洋館は今から100年ほど前に立てられて西洋人が暮らしていたけれど、それももう何十年も前の話だった。


周囲が森に囲まれてしまったこともあり、そこから先は誰も暮らしていない。


とても古い建物だということもあり、現代の若者の間ではお化け屋敷と呼ばれる存在になっていた。


それでも、やっぱりここにいると気持ちが落ち着く。


姿形を変えても、生まれ育ち、両親との思い出がある場所なのだから。