山形丘高校、1年A組の教室内はお昼の匂いに包まれていた。


生徒たちは思い思いにお弁当を広げておしゃべりをしながら昼休憩を楽しんでいる。


あたしはお母さんが作ってくれたお弁当から箸でウインナーを取り出して口に放り込んだ。


しっかりと焼けたタコさんウインナーは足がくるりと輪を描いていて、噛むとカリッとした食感がした。


この、少し硬くなった部分があたしは好きだった。


大好きなタコさんウインナーを食べていると、教室のどこからか話声が聞こえてきた。


「昔、この町で大量殺人があったの知ってる?」


穏やかな昼休憩に似つかわしくない言葉に、あたしはつい耳をそばだてた。


この町で起きた大量殺人は有名で、書籍や映画にもなったことがあるくらいだ。


だけどそれはずっと向かい、あたしや、あたしの両親が生まれるよりも前の話だ。


半分都市伝説となっているけれど、一応実際に起きたことだということだけは知っていた。


「知ってるよ。犯人は男で、犯行当時まだ16歳だったんだよね?」


話を振られた女子生徒が返事をしている。


この変に暮らしている人なら、たいていそのくらいの情報は知っていた。


「そうだよ。あの事件があってから、この町で16歳になる頃に星マークのアザが現れる子供が現れるようになったんだって!」


「なにそれ? そんな話聞いたことない」


「だろうね。ここからが都市伝説なんだから」


「で? そのアザってなんなの?」


「当時の殺人犯が生まれながらに持っていたアザと同じものなんだって」


「殺人犯と同じアザが現れるってこと?」


「うん。16歳になってそのアザが現れるとね、その子も同じ殺人犯になっちゃうんだって」