6月下旬の朝は少し蒸し暑くて、僕は冷たい水で顔を洗った。


盛大に水音を立てながら顔を洗っていると、台所からお母さんが「朝ごはん、早く食べちゃいなさい」と、声をかけてきた。


僕は相手に聞こえるか聞こえないかくらいの声で「うん」と返事をしてから、水道の水を止めた。


途端にまた蒸し暑さに襲い掛かられて顔をしかめる。


ジメジメとうっとうしさの感じる梅雨は7月頃まで続くと、昨日のニュース番組では伝えていたことを思い出す。


さっき着替えてきたばかりの制服は、すでに汗にぬれてしっとりとしていた。


僕は不快感に顔をしかめたまま、台所へと向かった。


テーブルの上には白米とお味噌汁と焼きシャケが用意されていた。


湿気が多くて髪の毛もなかなかきまらず苛立ちを隠せない僕へ向けて、お母さんが箸を渡してくれた。


僕はそれを受け取り、一口味噌汁を飲む。


お母さんが作る味噌汁はいつも少し薄味で、それが朝の空っぽの胃には優しくてちょうどいい味をしていた。


今日の具は豆腐とネギだ。


柔らかな絹豆腐はかまなくてもするりと喉を落ちていく。


少し大きめに斜めにカットられたネギは噛むとシャキシャキとした食感がして、うまみが口いっぱいに広がっていく。