樹里が見ていた景色を、今あたしが見ている。


あたしに媚を売るクラスメートたち。


蕾と重行はすぐにあたしの仲間になった。


自分からパシリを買って出て嬉しそうにしている。


……なんてくだらない景色だろう。


心の底からそう感じた。


樹里はこんな場所に君臨して女王様気分になり、ターゲットを決めてイジメを行っていたのだ。


とてもじゃないけれど、女王様気分になんてなれなかった。


近づいてくるクラスメートたちの腹の中は手に取るようにわかってしまう。


亜里沙にイジメられないようにしよう。


亜里沙のご機嫌を取っておこう。


亜里沙の言うことを聞いておけば、しばらくは学校生活が平和だ。


本当の友人とは程遠い感情で動いているのがバレバレ。


こんな中で楽しく生活なんてできるはずがなかった。


ただただ、むなしさが募るだけだ。


「樹里ってかわい子ぶってると思わない?」


あたしが暇そうにしていたからだろうか、蕾がそんなことを言い出した。


「え?」


「あたし前からそう思ってたんだよねぇ」


鏡で前髪を直しながら言う蕾。