久典とあたしは付き合いが長いから大丈夫。


だって、谷津先生の事件を一緒に乗り越えたんだから。


久典は見た目であたしと付き合っていたわけじゃないから。


どれだけ自分に言い聞かせても、浮かんでくるのは転校生の飯田さんの顔ばかり。


飯田さんは今日一日久典におんぶに抱っこで、教科書を見せてもらうだけにとどまらず、校内案内までされていた。


そんなものクラス委員の仕事なのに、飯田さんが自分から久典にお願いしたらしい。


帰宅してからも胸のモヤモヤが晴れることはなく、あたしは自室の鏡の前に座って
いた。


どれだけ笑顔を作っても、どれだけメークをしてみても、前の自分の顔には戻らない。


智恵理と栞と3人で撮ったプリクラを見て、それを片手で握りつぶした。


「どうして元の顔に戻らないの。どうして?」


ぶつぶつと呟いてメークを何度もやり直す。


あたしは綺麗だったはずだ。


あたしは可愛かったはずだ。


あれだけみんなにちやほやされて、生きていくのが楽しくてしかなかったんだから。


少しまぶたが形を変えただけなのに、どうしてこうも変化してしまうんだろう。