「好きですっ。付き合ってください」



6月の少しジメジメした空気が漂う、校舎裏。

私、藤澤 奈々は告白現場に遭遇してしまいました。



「えーっと」



男子生徒の困ったような声が聞こえる。

校舎裏の自販機に隠れている私。

なんで、私が隠れなきゃいけないの!?

……いや。

もし、ここから飛び出して『告白聞いていましたっ』なんて言ったら、冷たい目で見られるだけだろう。


はあ。

転校早々、運が悪いなぁ。


男子生徒の様子からして、告白の返事はあまりよろしくないものだろう。

朝から気分が下がってしまう。

心の中で大きなため息をつく。



「……ごめんね?」



優しい声で、やんわりと告白を断る男子生徒。

相手を振るときも優しい人柄だったら、そりゃモテるよなぁ。



「いえっ、いいんです! 呼び出してすみません!」



かわいらしい声と同時に飛び出してくる女子生徒。



「わっ!」



急に私の目の前に飛び出してくるから、思わず声を上げてしまった。

だけど、その女子生徒は私の存在に気がつかなかったのか、目の前を走り去っていった。


振られるのって辛いよね。

さっきの子、泣いていたもん。

告白して振られるとか、辛すぎる。

まあ、私は初恋もしたことないですけどね。