…そして冒頭に戻る。


私は家を見回り、全ての場所を見た。


キッチンには、母親。


父の部屋には、父親。


私の部屋には、一番好きだった飼い犬。


和室には、弟。


寝室には、双子の兄弟犬。


こうして、私の家には死体が転がっていた。


全て、頭がなかった。


真っ赤な彼岸花が全員の心臓に咲いているだけ。


私は、見るのが嫌で外に出た。


そのまま、大きく息を吸い込む。



「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!」



そのまま、膝から地面に倒れ込む。


膝から出血しようと構わない。


ただ叫びたかった。


近所の人達はわたしのおかしな様子に


寄ってきて、話しかけてくる。


生憎今の私にそんな余裕はない。


手が震えて、足も震えて、


呼吸がままならない。


ヒュ、と喉から音がする。


肺がうまく動かない。


何が、いつも通りだ。


全く違うじゃないか。


やがて、近所の人の声も聞こえなくなってくる。


こんな時にも、涙が流れない私は、


本当にクズだと思う。