「…母さん……?」


その日、家から悲痛な叫び声が聞こえた。






















遡ること、数時間前__。


マスクをし、帽子を赤く被り、


夏だというのに長袖を着ている、


明らかに人が嫌いな少女、


赫石魅紗(アカイシミスズ)は


一人で買い物に来ていた。


正直言って人は嫌いだが、


推しのために家を出てきたのだ。


やはり外は嫌いだし、人にも会いたくはない。


そう思いつつ、彼女は足を進める。


友達は決して少ない方ではない。


ただみんないわゆる陽キャなのだ。


その子達に自分がオタクだなんて言ったら


仲間外れにされるだろう。


だから今凄い地味な格好をして、


バレないよう男装までしてきたのだ。


このまま買ったらすぐに帰って開封タイムだ。


嬉々としながら歩く。


その時、彼女は家族が死んでいようとは


思いもしなかった。