3話「共犯者」



 ワインの飲みすぎが原因なのか。忘れたはずの記憶を思い出してしまったからなのか。
 虹雫は、帰りのタクシーで気分が悪くなってしまった。


 「……ごめんなさい、2人共。少しはしゃぎすぎたかな……」
 「食事会の前も疲れた顔してただろう?仕方がないさ」
 「わかっていて、酒を止めなかった俺らにも責任がある」
 「自分の体調もわからない私が悪い……」
 「いいから、もうしゃべんな」


 車酔いもしやすい虹雫だが、行きは全く酔わなかった事を考えると、やはり飲みすぎなのだろう。3人の虹雫の自宅の少し前で降りて、しばらく歩く事にした。虹雫の体を剣杜が支え、宮は2人の荷物を持っていた。


 「水とか買ってくる」
 「え、あぁ……」
 「…………宮」


 虹雫のマンションの手前まで歩いてきた所で、宮はそう言い来た道を1人で戻っていく。真っ暗な夜道。いつも彼はモノトーンの服を着ているので、あっという間に闇に混ざって見えなくなってしまった。
 虹雫はゆっくりと階段を上がり、小さな部屋に入った。
 ワンルームの部屋には本が多く並んでいる。窓の下にあるシングルベットまで虹雫を運んだ剣杜はゆっくりと体を下ろしてくれる。