那岐side




ひどく懐かしい夢を見た。

あれはいつだったか、どんな話をしていたか、こうして思い返したいときは霞みがかったように曖昧な記憶なのに。


たまにこうしてハッキリと見せてくれるから、恨めない。



「今日から門限17時」


「はぁっ!?そんなの無理だよ!」



夏休みが終わり、絃はセーラー服姿で俺の前に立った。


つうか…スカート短すぎだろ。

本人は気にしていないようだし、朝食を掻き込む姿からそういう心配はまだ必要ない気もするが…。



「授業終わるの16時だよ!?それじゃあどこにも寄れないでしょっ」


「寄らなくていい」


「友達とファミレス行ったりしたいの!」


「なに抜かしてやがる。てめえは帰ったら稽古って決まってんだよ」



小遣い制度はやはり無しにした方が良さそうだと思ったが、さすがにそれまで縛ったら可哀想だと月に3万は渡してある。

「多すぎるわっっ」と、最初は言っていたというのに今はそれすらも忘れてるらしい。



「あれって夏休み期間限定じゃないの!?」


「んなわけねえだろ」



正直、ここで生きるならば学校も行く必要ないところもあるが。

そこはまぁ、俺がどうこう言う話でもない。

ただ今まで以上に危険が付きまとうことは確かだ。



「それと、送り迎えは必須だ」


「保育園児かっ!」