日山 永遠、高校2年生。

親譲りの上品な見かけに恵まれた容姿。

皆は俺の第一印象をよくこう言う。

「優しそう」と───



そして俺が猫被りを始めたのは小学6年生の頃。


『永遠くんと永遠くんのお兄ちゃんってあんまり似てないよね〜』


同じクラスの女の子からそんなことを言われた。


『わかる、お兄ちゃんの方は大人って感じで永遠くんとは正反対だよね〜』


などと、好き勝手言いたい放題言って俺と兄貴を比べた。


兄貴とは一回り年が離れていて仲も良かった。

兄貴は基本何でも簡単にこなすタイプの秀才。

人柄もよく、おおらかで頼りになる存在だった。


一方、俺は人並みに勉強も運動もできたが、兄という才能ある人間の弟であることに劣等感を抱いていた。

小学校時代の女子たちは、大人な男性に憧れている者たちが多かったため、

うちの兄貴がまさに理想だったのだろう。


『永遠くんとは正反対だよね〜』


と言われて腹が立った俺は、


(だったら俺も兄貴みたいになってやんよ!!)


そう心に決め、猫をかぶるという

自分の本性を隠し、大人しいフリをして人に優しく振る舞う能力を身につけた。