ケータイ小説 野いちご

星屑の涙に君を想う

3.別れたの?


 教室が活気に包まれている。

 辺りはペンキのにおいが充満していて、いかにも!って雰囲気。

 私は体育祭のスローガン、『一人ひとりが主人公 ~協力し、笑顔あふれる体育祭~』の文字のまわりを黄色に塗っていた。

 今日からは、各グループごとに、横断幕や看板づくりに取りかかっている。

「あ、水野ちゃん、ここはあえて水色にするのはどう?」

 塗り残しを指差して、浅井さんがニッと笑った。

「わあ、いいね! そうしよっ」

 私は爽やかな水色のペンキで、残ったところを塗っていく。

「すごい、最初よりよくなったー!」

 感激して、パッと浅井さんを見ると、「でしょ?」と彼女は得意げに笑った。

 最初は、文字以外のところは黄色で塗りつぶす予定だったんだけど、浅井さんのおかげで当初よりもいい感じになった。

 浅井さんすごい! センスがあるんだ!

 私ははしゃぎながらも、チラッと横断幕の向こうに座っている男子を見た。

 彼は、他の男子と一緒に、文字の微調整をしている。

 彼――海くんを見て、私は心の中で小さくタメ息をついた。

 あの日から、私は海くんに話しかけようと試みなくなった。

 海くんも、私に声をかけることはおろか、私を見ようともしない。

 彼とのトーク画面も、私のメッセージでとぎれている。

 ほんとはさみしいけど、彼にきらわれている以上、無理に行動は起こさないようにしようと決めた。

 このことは夏希ちゃんにも話して、「そっかあ、一ノ瀬は星奈の魅力に気づいてなかったんだね」と難しい顔をしていたけど、「星奈がしたいようにしな」と言ってくれた。

 装飾係の集まりで海くんを見るとどうしても辛くなるけど、浅井さんもいるし、なんとか楽しくやっている。

「あっ、水野ちゃん、ペンキたれるよ!」

 浅井さんの声にハッとすると、水色のペンキが、いまにもハケからたれるところだった。

 ハッとして、ペンキの入った缶にハケをつっこむ。

「危なかったねー」

「う、うん、ごめん。ついボーッとしちゃってた……」

「や。いいんだよ。私もしょっちゅうペンキぶちまけちゃいそうで、ヒヤヒヤしてるから」

「あははっ」

 私は明るく笑って、目の前の横断幕づくりに集中した。

 海くんのことを見たら、すぐ思考が飛んで行っちゃうから、彼のことはいっさい視界に入れないようにした。

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