あれから約1週間後の昼休み。僕は、紫恩と一緒に屋上で弁当を食べていた。

今日は、いつもよりも静か。1年生と2年生は、校外学習でいないんだ。

「……静弥、幻影が来るよ」

制服のポケットから髪飾りを取り出した紫恩は、辺りを見渡す。次の瞬間、辺りが暗くなった。

そして、僕らの目の前に幻影が姿を現す。それと同時に、校舎内から悲鳴が聞こえた。

「……一体、何が……」

「分からない。でも、この学校の中だけで幻影が何匹もいるみたいだ……」

そっか……紫恩って、人や幻影の気配に敏感なんだっけ。

「とりあえず、玲と優花が来てくれるまで僕らで幻影を倒そう」

紫恩の言葉に、僕は頷くと髪飾りを取り出す。

「僕の心は、いつだって灰色だった」

「僕に親友がいるなんて、夢のような話だ」

僕は青い炎が揺らめく魔法筆を、紫恩は紫の炎が揺らめく魔法筆をそれぞれ握った。風が吹いて、僕と紫恩が制服の上から着てるローブが揺れる。

「……静弥。ここは僕に任せて、校舎内にいる幻影を浄化してくれない?」

「え……?」

「多分、今いる幻影の中で……あの幻影が1番強い。でも、この空間にいるのは1匹だけじゃない。それに、物書きじゃない皆が危ない」