玲から本をもらった僕は自分の部屋にある椅子に座って、もう一度本を読み返していた。
「何回読んでも泣けるな……」
溢れた涙を拭って、僕は本を閉じる。ふと表紙に目を移すと、表紙には「何色にも染まれなかった」と書かれていた。
「……何色にも染まれなかった……?これ、本のタイトルなのかな……?」
『そうだよ』
どこからか声がして僕は辺りを見渡すけど、どこにも誰もいなかった。
『僕は、何色にも染まれなかったというタイトルの本の主人公。君に本を読んでもらった時は、本当に嬉しかったんだ……ありがとう』
それ以降、誰かの声はしなくなる。この本の主人公……?
僕は、本をじっと見つめる。その時、部屋の外から声が聞こえてきた。
「静弥!ご飯、出来たよ!」
母さんの声が聞こえてきて、僕は「はーい!」と返事をすると、本を机の上に置くと部屋を出た。
夜。僕は、携帯のメモに小説を書いていた。ふと小説を書いてみようかな、って思ったんだ。
頭に浮かび上がる物語を、言葉を選んで紡いでいく。その瞬間が楽しくて、気が付けばもう寝る時間だった。
……そろそろ寝ようかな……。
書きかけの小説を保存して、僕は布団に横になった。