暫く、私と久住君は無言で抱き合っていた。


彼のモノなのか、私のモノなのか。
ただ、心臓の鼓動がドクドクと聞こえた。



「……カッコわる…俺」

「どうして」

「だって、好きな人の前で泣いてたし。
それに先生の事、力任せに引っ張った」


そう言うと、久住君は私の手首をそっと撫でた。
くっと眉間を狭めると、声を漏らす。


「痛かったですよね」

「ううん。平気。少し驚いたけど」

「……すみません。幸せにするって言っておきながら、説得力ないですよね」

「そうだねえ」

「……」


久住君は私がそういうと、唇をきゅっと噛みながら俯く。


「なんてね」



ふふって笑うと、私は久住君の髪の毛に指を差し込んだ。
柔らかい感触が心地いい。



「男の人だ、ってちゃんと思ったよ」

「……先生」

「力だって全然敵わなくって、びっくりしちゃった。
私も高校生だった事あるのにね。何か、色々忘れてた。
子供扱いなんてしてるつもりはなかったんだけど、そう思わせてたんならごめんね」

「……いえ」


ふいっと視線を逸らす久住君。