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「ペアが決まってないやつはくじ引きで決めるからな。同性同士じゃなくて男女だぞー」

ホテルのホールに集まった生徒の前で声を張り上げた体育教師の言葉に苛立つ。
友人同士でペアを組めると思っていたのに、まさか男女ペアなんて思わなかった。そばに立つ友人も「えー、男女!?」と体育教師に向けて不満を漏らす。

「翔と組みたかったのに」

俺の不満な声に「氷室と組めよ」と友人の高橋翔がニヤつく。男女ペアが嫌だって言っているのになぜ氷室と組まなければいけないんだ。

楽しいはずの修学旅行のレクリエーションで肝試しをやるところまでは百歩譲って我慢する。けれど男女ペアを強要するのは如何なものか。

「なあ、肝試しで叫んだやつ罰ゲームな!」

「はぁ?」

誰かが言い出した言葉にそのまた誰かが呆れた声を出す。

「こんな高校生が考えた肝試しが怖いわけねーじゃん? だからもし叫んじゃったやつには何か罰ゲームにしね?」

「おどかす役のやつが言ってたけど、結構怖いって」

「だったら尚更罰ゲームやれば面白いだろ」

「一発芸とか?」

「それよりも、私は告白がいいと思う」

口を挟んできたのは氷室紗枝だ。

「叫んだ人は気になってる人に告白するっていうの。どう? 面白そうじゃない?」

氷室の提案に何人かは嫌な顔をする。

「好きな人がいないやつはどうするんだよ?」

俺は呆れて口を挟んだ。氷室は面白そうな顔をする。

「んー……それならペアになった人に告白するの」

「告白ってそういうもんじゃないだろ?」

翔も俺と同じく呆れた声を出す。

「だから罰ゲームなんだって」

「夏城くんも高橋くんも、こんな形で告白はしたくない?」

「別に。俺は香菜と組むから問題ない。もし罰ゲームになったらあいつに棒読みで言うだけだし」