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契約している農家が天候不良によりフルーツの納品ができなくなってしまい、代わりの食材を調達するのに時間がかかってしまった。
連絡を受けてからどれだけ時間が経過したのか感覚がなくなってきていた。
来週から発売の商品に使う食材が使用できなくなり、店舗全てで販売中止の危機だった。

「取りあえず別の業者を探してます。SNSで発売を告知してますし、あとは営業部でも対応お願いします」

内線で別部署の社員とやり取りをして外線で業者に連絡を取る。食品開発部でできることは業者の仲介だけだ。
これから別の農家から仕入れて、微妙に違う味を調整して素材の分量を変更して各店舗に連絡をするのは更に時間がかかるだろう。

「日野―、間に合ったよー」

オフィスに入って来た冬木さんは危機感のない笑顔で私のデスクに近づく。

「工場に行ってきた。明日の朝一で各店舗に直接代替品を納品してくれるって。工場長の伝手があって助かった」

「よかったー……」

ギリギリで何とかなって安心した。

「あのさ、油断してる日野に質問なんだけど、この間の同級生とはうまく話できたの?」

「あー……それは一応」

冬木さんの口から蒼くんの話をされるのは嫌だった。私が好きなのは冬木さんなんですよって言ってしまいそうだ。

「元カレと揉めてるとかそういう感じ?」

「元カレじゃないですって! 私今まで彼氏いたことありませんから!」

オフィスで大声を出してしまい恥ずかしさで思わずパソコンの影に体を隠す。
冬木さんにこんなこと言うはずじゃなかった。

「じゃあ日野のストーカー?」

真顔で聞くからそうかもしれないと思ってしまう。蒼くんがこんなにしつこいなんて思わなかったから。