「薄井さんっ」
「っ!?・・はい」
後輩がデスクの隣から声をかけていることにしばらく気づけなかった綾乃。
驚いて後輩の方を見ると、不思議そうな顔をして見つめられる。

「珍しいですね、薄井さんがぼーっとするなんて。」
「そうかな。」
「あの・・・・・・・」
「え?」
後輩の声が突然耳に届かなくなった綾乃は後輩に聞き返した。

「大丈夫ですか?」
通常の声量で話をしていた後輩が心配そうに綾乃を見る。
「大丈夫、大丈夫。ごめんね、もう一回言ってもらってもいい?」
綾乃は全神経を耳に集中させて後輩の声を聞き取った。

自分でも異変に気付き始めていた。