エコーで赤ちゃんを見た経験の浅い二人でも、医師が振動をあてて、真剣な表情でモニターを見ている姿に言いようのない不安を感じた。

それまで和やかだった診察室の空気が一瞬にして変わる。

医師は綾乃のお腹の位置を変えて機械で振動を与えていく。

二人は気づき始めていた。

モニターの中の赤ちゃんが動いていないことに。

心臓のあたりがちかちかと点滅していた前回の検診。
なのに今はちかちかしている部分が見えない。

角度の問題かもしれないと言い聞かせても、明らかに角度が問題ではないと徐々に確信に変わっていた。

沈黙のまま進んだエコー。
「一度身支度を直してお話ししましょう。」
医師はそう言って、綾乃とも悟とも目を合わさないまま、椅子から立ち上がりその場を離れた。