「藍先輩、やっぱり恥ずかしい」


「大丈夫だから、愛菜ちゃんそんなにくっつかないで」


「ごめんなさい、でもでも」


ギラギラと降りそそぐ夏の太陽。


その光を反射して鈍く光る砂浜。そして雄大な青い海。


近所の海水浴場に連れてこられた私はふるふると小さく震えながら先輩の背中に隠れるようにして立っていた。


実はこういう人がたくさん集まる場所は慣れていなくてすっごく苦手なんだ。


それなのにどうしてこんな場所に先輩と二人で来ているのかというと……。


それは数日前母と先輩の会話から始まった。


『春美さん、愛菜ちゃんって毎日ここでお手伝いしてるね。たまには遊びに行ったりしないの?』


母のお店(あいさい弁当)に晩御飯を買いに来た先輩は私にじゃなくて母に話を振ってきた。


『そうなのよ、愛菜ったらお休みの日でさえどこにも出かけないのよ』