日常が過ぎて行く。

私にとって、涼介が家にいることが日常になってしまった。今までは、誰かと住むことを頑なに拒んできたのに。
元カレの中にはこの家に住みたくて、私と付き合っているんじゃないかと疑ってしまうような人もいたから。
「誰かに貢いでもらってるの?」
と聞いてきた男とは、その日に別れた。

その点、涼介は気楽だ。
私の事情も知っているし、探り合う必要がないから。

昔、おじいちゃんに言われたことを思い出す。

「あゆ、人のことを信用し過ぎるなよ。でも、絶対に自分から裏切るようなことはしちゃいかんぞ。」

その時は、全然意味が解らなかったけど、今なら、少しは理解ができる。

自分を守るための「防御の極意」。
私は忠実にそれを守って生きてきたつもりだったのに、今回の彼のことでは間違った。

彼を信用し過ぎて嘘を見抜けなかったし、彼の家族を裏切ってしまった。

今頃、おじいちゃんは天国で怒ってるかもしれない。ごめんなさい、悪い孫でした。

空に向かって、謝っておこう。