私は階段を下りて、冷蔵庫からビールを取り出すと、リビングのソファに座っている涼介の隣に、何も言わずに座った。

「俺がここにいても平気?」

「うん、ここにいて。」

私達は目を合わせることなく、それだけの言葉を交わすと、二人でテレビを見ながら飲んだ。

涼介はずっと何も聞かない。

「ねぇ、本当に何も聞かないの?」

「プライベートなことには立ち入らない。」

「私ね、あの男と別れたから。」

「言わなくていいのに。」

「私が聞いて欲しいの。ねぇ、話していい?」

「俺は話を聞くだけだからな。」

涼介がそう言ったから、私は話し始めた。

「不倫が悪いってことは知ってた。
でも、好きだったの、彼のこと。」

「知ってる。」

「ずっと苦しかった。罪悪感もあったし。
でも、それ以上に寂しかったの、一人でここで暮らすのは。だから、優しくされて好きになっちゃった。」

「優しい独身男だっているだろ。何も、結婚してる男を選ばなくても。」

「聞くだけって言ったじゃない。」

「ごめん、つい。」

「嘘、本当にそうだよね。今のはただの言い訳。」

「じゃあ、別れてスッキリした?」

「そんな簡単じゃないよ。」

「そうだな、ごめん。」

さっきから涼介は謝ってばかりだ。